渋谷公会堂「渋谷エクスタシー」の巻 2000年4月28日・5月3日

1. 4/28のエクスタシー

『週刊プレイボーイ』によると7万を越える値がついているらしい椎名林檎のコンサートツアー「下克上エクスタシー」の渋谷公会堂での公演に行ってきた。渋谷公会堂に行く道すがらでは、チケットを譲ってくれと書いた紙を持った人たちがならんでいた。それとは別にチケットや万札を手にしたダフ屋の方々の列も(笑)。どちらかというとチケット買うという方が多かった気がする。

会場は、当然ながら大入満員。客の年齢は意外と高く、自分の席の周りは男性も女性もスーツ姿の人が多かった。

Blanky Jet Cityの「ピンクの赤い豚」がかかっているが、開演時間を過ぎても始まる気配はない。10分が過ぎたあたりで、「月に負け犬」のイントロが流れ始めた。同時にハート型のスポットライトがステージの幕にあたる。林檎嬢とベースの亀田師匠のシルエットが浮かび上がった。幕が上がると同時に大音響で曲が流れ、林檎嬢の響くような歌声がホールに広がった。腹にずんずんと響く。そのまま疾走するように数曲をメドレーで歌い上げる。

「ここでキスして。」や「本能」のジャケット写真のように病院をイメージしているのか、舞台の天井の中央から手術室の天井から下がるライトのようなオブジェが5つ。ステージ中央には心拍モニターが。客席から見て左の袖には人体解剖模型が置かれている。右の袖には布の衝立が。ご丁寧に舞台スタッフも男性は手術着姿、カメラマンの女性はナースルックだ(笑)。林檎嬢以外のメンバーはみな白衣姿。しかも亀田さんはモヒカン(笑)。林檎嬢本人はというと、包帯ぐるぐる巻きの患者という設定なのか、白いロングスリーブのドレスに白いパンプスといういでたちである。「本能」以降の露出の中で見せた傾向が、昨年のライブで女王様姿を見せたときのような彼女なりのサービス精神によってここでも発揮されていて微笑ましい。

「本能」に入るや、林檎嬢は、いまやトレードマークとなった感がある拡声器を手にし、『約束はいらないわ〜』とステージを縦横無尽に動きまわりながら歌い続ける。

一息つくと、東京スポーツ新聞による改名報道を否定するコメントを林檎嬢は、述べた。『火のないところにも煙は立つんですよ』と。照れくさそうに『非合法トリップなんてしてないので惑わされないでね』と語ったのが印象的だった。

「虚言症」、「積木遊び」、「あおぞら」、「ギプス」と再び一気にメドレー。「あおぞら」を『無罪モラトリアム』所収の「幸福論(悦楽編)」のようにドライブ感あふれるアレンジで演っていたのが面白い。よほど気に入っていたのか、『もう一丁』と2度演ったのであった。「積木遊び」では、しっかり「しくじった音頭」を林檎嬢は踊ってくれました(笑)。

そして、この「下克上エクスタシー」ツアーのために作った曲だと紹介した曲のタイトルが「やっつけ仕事」(笑)。「乳頭デストロイヤー」もあれだったが、これも何だかなぁ(笑)。が、曲調はごりごりのハードロック。歌詞がよく聴き取れなかったが、なかなか格好いい。

数曲演った後は、「幸福論」のイントロに乗せながら虐待グリコゲンのメンバー紹介。ギターの紹介が終わると「幸福論(悦楽編)」。そのままラストまで一気に林檎嬢は歌い上げたのでした。

「病床パブリック」が終わると、メンバーはいったん退場。もう一回の声と拍手の嵐に応えて、3分ほどすると一同は再登場した。アンコールは、「同じ夜」、「丸の内サディスティック」。

最後の曲が終わると、それまで激しく波打っていた「心電図」の動きが緩慢になっていき、ついにはラインはフラットになってしまった。ピーという音とともに手術着姿のスタッフが花束を抱え、舞台中央へ。花束を置くとともにゆっくりと緞帳が下りていき、閉演となった。

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