渋谷公会堂「渋谷エクスタシー」の巻 2000年4月28日・5月3日

2. 5/3のエクスタシー

曇天に雷が鳴り響く中、追加公演にも行ってきた。今日の方は、雨がぱらついていたせいもあるが、渋谷公会堂に行く道すがらでチケットを譲ってくれと書いた紙を持った人たちは、それほどならんでいなかった。ダフ屋の方々も(笑)。

今回も当然ながら大入満員。ゴールデンウィークの真っ只中ということもあってか、みなラフな格好をしていた。看護婦姿のコスプレの人もちらほらと(笑)。

今回もブランキーがかかっている。開演時間から10分が過ぎたあたりで、「月に負け犬」のイントロが流れてきた。

ステージのセットは前回と同じ手術室。バンドメンバーも同じコスチュームで、林檎嬢も「罪と罰」のジャケットのように目の周りを黒く塗り、包帯ぐるぐる巻きの患者さんである(笑)。偶像として期待されている姿をまんまオーディエンスのあなたたちに見せてあげるわということなのだろうか。まさに、イメージとしての林檎嬢自身を具体化していると言っていいだろう。

「月に負け犬」、「警告」、「君ノ瞳ニ恋シテル」ときて、「本能」まで行ってMC。『渋谷の街になんでこんなに人がいるのかわからなかったので、マネージャーに聞いたら、「ゴールデンウィークだからだよ」って言われて、ああ、もう、五月に入ったんだと実感しました』と福岡訛りで訥々と林檎嬢はしゃべる。前回は女性からの声援が多かったが、今回は男性の野太い声のほうが多いようだ(笑)。林檎嬢は、今回のツアーも点滴を打ちながら臨んでいるという。また、入院してしまわないか心配だ。

「虚言症」〜「ギプス」を一気にメドレー。一息ついたところに野太い声がかかり始める。『かわいい』と変なアクセントで声かける男性あり(笑)。林檎嬢は彼に注目すると、何度か催促。それに応えて彼も何度となく『かわいい』と変なアクセントで返す(笑)。数回繰り返したあたりで、林檎嬢は、ぱちもん(海賊版)商品について話し出す。渋谷公会堂へと連なる公園通りの露天で売っているグッズには、『手を出しちゃ絶対ダメ、たぶん』と言いながら、『灰皿がいいらしいね(笑)』とぽつり。案の定、帰りに見た露天では灰皿が姿を消していました(笑)。

「ギャンブル」、「やっつけ仕事」、「弁解ドビュッシー」の後、深呼吸。 『I'll never be able to give up on you 〜』とアカペラで「ここでキスして。」の出だしが始まる。生で聴くとめっちゃ艶っぽくて、ぞくぞくしてしまう。初めてプロモーション・ビデオを見たときもそうだったが、やはり歌の威力は凄いと思った。

曲の構成などは、前回と同じであったが、最大の違いは、やはりライティングだろう。今回は、ビデオ撮影していることもあってか、ライトの動きにしても使い方にしてもだいぶと前回と異なり、それだけでも充分に楽しめた。しかし、演出もあるのだろうが、前回・今回ともメンバーの動きが少ないのが少し残念だった。また、音響が楽器の音を前面に出す形にミキシングされていたため、林檎嬢の歌声が聞き取れにくかったのも少々残念だった(3日の方は、それでも少し調整したのか、28日よりは聞き取りやすかった)。彼女の音楽の魅力は彼女の歌声あってこそなのだから、あえて普通のロックコンサートと同じ手法をとる必要はなかったのではないだろうか。

「丸ノ内サディスティック」が終わったあとの「心停止」は、林檎嬢自身による自己イメージの変革を意識したものなのだろうか。東京スポーツ新聞による改名報道を否定するコメントをコンサート中に彼女は述べた。また、彼女は、次のアルバムをリリースした後は休業するとも伝えられる。『ぴあ』でのインタビューでは、ナース姿などの自分を見てコスプレを期待されても困るという趣旨の発言もしている。改名はしないが、自分のイメージは「破壊する」ということなのだろう(もっとも『無罪モラトリアム』と『勝訴ストリップ』で対になると当初は言っていたが、今では3作目も含めて1つになると言っているのでどうなるかわからないが、ある次期での「完結」を意識していることだけは確かだろう)。「自分の死」という形で、自分を食らいつくそうとするイメージを笑おうとしているようにも見えた。

下克上エクスタシー・渋谷公会堂(4/28・5/3)演目リスト
1:月に負け犬 13:アイデンティティ
2:警告 14:幸福論(悦楽編)
3:君ノ瞳ニ恋シテル 15:罪と罰
4:本能 16:歌舞伎町の女王
5:虚言症 17:浴室
6:積木遊び 18:依存症
7:あおぞら 19:シドと白昼夢
8:ギプス 20:病床パブリック
9:ギャンブル(未発表曲)  
10:やっつけ仕事(未発表曲) 「アンコール」
11:弁解ドビュッシー 1:同じ夜
12:ここでキスして。 2:丸の内サディスティック
退室