History of ZAKU

【テロルの決算】

一般に「アクシズ動乱」と呼ばれる第2次ネオ・ジオン抗争は、ジオン公国(ザビ家)の再興を目的としていた第1次ネオ・ジオン抗争とは異なり、ジオン・ズム・ダイクンの理想を形にしようとして活動が進められた。「人類が地球を壊滅状態においやらないためにも、総ての人類は地球の自浄能力により環境が元に戻るまで、地球に住むべきではない」と考えた「ネオ・ジオン」の総帥シャア・ダイクンは、核の冬を起こすことで、それを実現させようとしたのだ。この闘いに地球連邦は辛うじて勝利を収めるが、反地球連邦運動はその本質を受け継ぐ形で、スペースノイドの間に根づいてゆく。反地球連邦運動の中核を担っていたエウーゴの失敗により、もはやかつてのような大同団結は不可能となっていたが[1]、アナーキズム的なテロリズムの嵐は吹き荒れる一方であった。連邦政府は、大規模な戦闘に発展する前にこの芽を摘み取ろうとしたが、実質的には、規制の強化しか能のない、無能ぶりを今さらのように露呈したにすぎなかった。

0099年9月、月最大の発電所シッガルトがヌーベルエウーゴ及びネオ・ジオン[2]に占拠された事件の責任をとる形でジオン共和国は自治権の放棄を閣議決定すると、翌年6月には連邦との間で「ジオン共和国の連邦合併に関する条約」が締結され、ジオン共和国の自治権放棄が確定となった。スペースコロニーに誕生した宇宙初の独立国家42年に及ぶ歴史はここで幕を下ろした。同8月には、連邦政府はジオン合併法を成立させ、その成立を以て、地球圏における大規模戦乱の消滅を宣言した。

しかし、その宣言後も反地球連邦を掲げるテロ組織による人的な被害や施設の破壊工作等が起こることはあったが、大規模な戦闘はすっかりなりをひそめた。しかし、MSを用いた大規模なテロを続けていたのが当時最大の組織であったマフティーである。彼らが使用していた重MSメッサー[3]は、残された僅かな資料から判断すると、モノアイタイプのメイン・カメラを使用し、ドーガ系の設計思想を色濃く残しているように見える。

シャア・ダイクンの意思を継ごうとしたマフティーのアデレードの連邦議会襲撃事件以降、反地球連邦運動は完全に沈静化した。そしてまた、モノアイを使用するMSも歴史の表舞台から姿を消した。必要とする環境がある限りMSはこれからも発展を続けるであろう。しかし、ジオン系MSの血統は、此処に途絶えたのである。

[註]
[1]
エウーゴは連邦軍及び連邦議会における主導権を得たことで連邦軍エウーゴ派将兵のエウーゴ大量離脱やエウーゴシンパ議員による改革熱の沈静化を招いた。ティターンズという敵対者の排除に成功したとはいえ、思想的理論的指導者を相次いで失ったエウーゴの大幅な組織縮小改変も、急速な反地球連邦運動体の分裂化、精鋭化に拍車をかけた。
[2]
この第3次ネオ・ジオンの指導者は、ベルム・ハウエル。一説にはミネバ・ラオ・ザビを擁していたと云われるが、ミネバはグリプス戦役以後行方不明であり、シッガルト事件のミネバは影武者、あるいは、クローンであったとの説も根強い。なお、誤謬は幾つか見られるが、シッガルト事件については、『ムーン・クライシス』(松浦まさふみ、Mediaworks (0105))が詳しい。
[3]
Me02Rの製造にはAEが関与していたと云われるが、それを実証する事実は今のところ見つかっていない。当時、軍用MS市場はAEの独占状態にあり、またかつてAEはエウーゴに武器供与をしていたことからそう見られたようだ。AEは、独占禁止法違反で連邦法務省から訴えられ、現在も係争中である。

※本稿を脱稿し終えた後、ブッホ・エアロダイナミクス社の作業用MSデッサタイプに接する機会を得た。今までの軍用MSと比べると非常に全高が低く感じた。ゴーグル状のモノアイを使用している点が気にかかるが、確実にMSは新時代に入ったといえよう。
 人類の人口を半減させるほどの戦争を繰り返し、ようやく我々は平和な時代を獲得した。この時代が続くことを私は切に願う。

Susie D. Hillricefield (0121,Oct.09)

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