AEは0084年以降、月企業連合体とならんでAEUG(エウーゴ)の最大の出資者となっていた。しかし、連邦軍内でも多大な発言権を有するようになった特務部隊「ティターンズ」との関係を良好に保っておくために、AEは、ハイザックカスタムのための生産ラインを拡張し、さらにその改良型MSの生産を無償で行うことを、ティターンズ総帥のジャミトフ・ハイマン大将に提案した。こうして誕生したのがRMS-108 (マラサイ) である。もともとは、MSA-002 (ドミンゴ) としてエウーゴに提供されるはずであったが、上述のような理由からハイザックの後継機としてティターンズへの配備が進められた。106をベースにしているため、非常に汎用兵器としての完成度は高く、また、パワージェネレーター出力を25%向上させることにより、ビーム兵器の充実を計るなど、全体的にグレードアップがなされている。更に、機体に新素材ガンダリウムγを採用し軽量化を計るとともに、高い機動性を獲得することに成功した。
ハイザックに続く量産型MSとしてマラサイの生産は順調に進んでいたが、0087年5月エウーゴによりティターンズの象徴とでもいうべきRX-178(ガンダムMKU)が強奪されるという事件が発生することによって事態は一変する。
ティターンズ首脳部は当初から自軍のMSにジオン色が強いというだけで露骨に嫌悪感を示していたが、基本に忠実な機体というのは、パイロットたちには好評であるのだろう、現場から伝えられてくる機体の優秀性故に目をつぶってきていた[1]。しかし、ティターンズはこの時期を境として「地球至上主義」を更により声高に唱え、精鋭化していき、出来るかぎりジオン色を廃したタイプのMSを採用していこうとするようになったのだ。
結果としてみれば、彼らの判断は間違っていなかったといえるだろう。なぜならば「ザク」を継ぐこれらの機体に対する唯一のネックは、0084〜0089年という時代背景においては、RMS-106や108のような八方美人的な量産汎用機よりも、局地戦用として用途別に開発されたMSが有望だったことに尽きるからである。
グリプス戦争時においては、特殊用途に限定した高級MSが数多く設計・開発されたために、RMS-106や108の評価は、個別にはともかく相対的に低いものとなってしまった。