MS-01(ZI-XA3) が高性能を発揮しえた理由の多くは、その特異な形状に起因しているということができる。
2本のマニピュレーターは人間の腕以上に自在に動き、各種兵装を持ち替え操作することが可能であり、しかも種々の工作作業等にも使用できた。また2本の脚はあらゆる地形での行動を可能とした。
各関節の駆動には流体内パルスシステムが採用された。これは原子炉で発生したエネルギーをパルスコンバーターで流体内部のパルス状圧力に変換し、それを髪の毛より細い数千本の流体パイプに導き、関節駆動用ロータリーシリンダーに極超音速で伝達するというものである。このシステムは油圧に比べて作動スピードが早く、また、電動モーターに比べ重量が小さく、機構が簡単な点で優れていた。
こうして駆動される腕と脚はMSの汎用性にとってきわめて有効であったが、宇宙空間での使用に際しては当然デッドウェイトになると考えられた。ところが、ZEONIC社の技術陣はこの常識を覆すシステムを開発したのである。それがAMBACシステム[1]と呼ばれるシステムの開発である。
大気の存在しない宇宙空間では空気抵抗等の妨害がなく、戦闘時の行動は一見有利なように思われがちだが、方向転換となると、抵抗の存在がないことはきわめて不利となる。大気中であれば、航空機は180°ターンに際して自らの運動量を翼に会して空気分子に与え、その反作用によって方向を変化させるため、機体の速度をほとんど殺すこと無く旋回できるが、宇宙機の場合には推進財を噴射させて、その反作用により旋回しなければならない。この推進剤の消費量はばかにならないぐらい大きく、在来型の宇宙空間用戦闘機の場合180°姿勢制御を2.5秒で行うと、30回程度で推進剤切れとなった。
ZEONIC社の技術陣が開発したAMBACシステムとは、従来の宇宙用戦闘機が、上述のように、姿勢を変化させるたびにバーニア・ロケットを噴射しなければならなかったのに対し、腕や脚の振りによって姿勢を変化させる方式のことである。このような、機体の部分的な質量の移動による姿勢制御は宇宙作業艇等でもバランス調整などの受動的な目的で使用されてはいた。しかし、軍用の強力な原子炉と流体内パルスシステムの使用により、MSのような兵器でも、腕や脚を先端の加速100G以上で運動させることにで、3秒以内で180°の姿勢変化させられるようにしたのである[2]。