「ペズン計画」とは膠着した戦局を打開するために、ジオン公国突撃機動軍が極秘に進行させていた兵器開発計画である。この計画と戦力の備蓄はア・バオア・クーで進められ、さらに本部を小惑星ペズンの秘密工廠に移して開発が続けられた。この計画を察知した地球連邦軍は、これらのMSを「MS-X」と呼び、情報を収集するため、デン・バザーク大佐以下の特殊工作部隊を活動させていた。ペズン計画によって生み出されたMSの正体は、連邦軍の「星一号作戦」に備えて開発された局地戦用MSであった。
だが、連邦軍の侵攻は予想外に早く、ペズンへ移動していた開発チームは、一部がジオン本国を経てアクシズなどに移ったものの、大半はペズン で終戦を迎えた。ペズン計画によるMSは、その性能を見た連邦軍の高官をして「星一号作戦」の展開が「もう1ヵ月でも遅れていたら連邦軍の勝利は 無かった」とさえ言わしめた[1]。
ぺズン計画で生産されたMSは、MS-10(ドワッジ)、11(アクトザク)、12(ギガン)、13(ガッシャ)、17 (ガルバルディα) の5体。中でもMS-11は、MS-06Fタイプをブラッシュ・アップし、総合的な運動性の向上を目的として設計された機体である。実験的であり、技術的に連邦軍がRX-78系に施したものより劣るが、関節各部にマグネットコーティング処理がなされている。また、当時としては画期的なリニアシートシステム[2] を生産ラインにのった機体すべてに搭載していたという。それに加えてペズン計画の殆どのMSは、ビーム兵器搭載のMSとの戦闘をあらか じめ考えて設計されたため、アクトザクもMS-14(ゲルググ)、15(ギャン) 同様に本格的なビーム兵器の使用が可能であった。
一年戦争当時のRGM79系と比べた場合のアクトザクの運動性能の高さは、データ上でも明らかであったが、実際のデータ収集のためのMS-11 とRGM79G(ジム後期型) との模擬戦においても、パイロットの腕はほぼ互角だった場合には、11の完勝になることがたびたびだったという。 また連邦初のニュータイプ対応型[3]MSと言われたRX-78-NT1のデータを用いたシミュレートにおいても、パイロットの腕次第では、ほぼ11 の方に軍配が上がったという。
その優秀な性能のため、押収された機体は、RGM79N(ジム・カスタム) 及び79Q(ジム・クゥエル) のアグレッサー機としてたびたび用いられることになる。そして、所謂第2世代MSが第一線に上がってくるまで、同様にその高性能を認められた17の改良機17B (ガルバルディβ) とともに連邦軍の手で量産され、配備されることになる。