1年戦争は、史上稀に見る壮絶な消耗戦の末に終戦を迎えた。連邦側の勝利で終わったこの闘いは、アースノイドのスペースノイドに対する警戒心を増加させ、ジオン対連邦の図式を地上民対宇宙民へと移行・拡大させただけであった。
公国軍残党の多くは、グラナダ条約を締結したジオン共和国政府を「売国奴」として正当な組織と認めてはおらず、戦争状態は依然継続していると考えていた。そういった勢力の急先鋒でありギレン・ザビの熱狂的な親派、元公国軍大佐エギーユ・デラーズ率いるデラーズ・フリートは連邦政府に対し、0083年10月31日、改めて宣戦布告を行った。
デラーズ・フリートが保有する戦闘艦、補給艦及びMS等は、殆どが一年戦争終結時の公国軍に残存した兵器であった。「星の屑作戦」が発動する前に、小規模ながらデラーズフリートは、連邦軍と戦火を交えることが多々あった。このような小戦闘によって失われるMSや戦闘機の数も「星の屑」に向けて戦力を温存しておきたいデラーズ・フリートにとっては、かなりの痛手となったため、本拠地「茨の園」設営を機に、連邦軍との戦闘において破壊された機体を基にリサイクルしようと考えMS-21C (ドラッツェ) を開発した[1]。
ドラッツェは、残存兵力をより効果的にまとめ上げたMSと言えるが、つまる所、「寄せ集め」による変異体であることは認めざるをえない。両肩にスラスターポッド、脚の代わりの巨大なプロペラントタンクを兼ねたスラスターといった奇妙な容姿を見ても解るように、バックパックは宇宙用戦闘爆撃機のガトル、両肩のスラスターポッドは作業艇のもの、シールドは艦艇の外壁というように、どれをとっても他からユニットを移植しているのだ。核となる胴体部及び、腕部にはMS-06型が用いられ、メインセンサーユニットである頭部ブロックのみが新規設計であった。武装は右下腕をバルカン砲に換装、左腕自体はノーマルのままであるがシールド内に固定式のビームサーベルが装備しているだけである。ドラッツェは、MSの長所の一つであるAMBAC機能が向上せず、もっぱら索敵用もしくは突撃用として用いられた。
歪んだ形であるとはいえ、ギレンの説いた理想は、公国に住む民衆はもとより、スペースノイドの中にも狂信的な信奉者を作りだした。ジオン公国という国家の成立と行動は、半世紀を過ぎた宇宙世紀を流れる大きな潮流となっていたのである。
為政者たち恐れと、地球連邦軍のジャミトフ・ハイマン准将派の思惑が結びついた時、0083年12月4日、表向きは連邦軍内の治安維持及びジオン残党処理を目的とする、特殊部隊「ティターンズ」が結成された[2]。
「星の屑」はスペースノイドとアースノイドの間に埋めがたい亀裂を拡げ、対立を深刻なものにした。そして、地球圏は新たな時代へと突入していく。